学校長ブログ

在校生へのメッセージ

75回生の入学行事に先立ち、令和2年度の1学期をスタートするにあたって、在校生に話したことを掲載します。
 それにしても、相手の顔が見えないところで、マイクに向かってしゃべるのは、なぜあんなに緊張するのでしょうか。

 昨日、新型コロナウイルスの感染拡大による緊急事態が宣言され、兵庫県の県立学校においても、休校措置が5月6日まで延長されることになりました。

本来なら、新しい学年を迎え、「よしやるぞ」という気分が高揚するときのはずでした。

 3年生にとっては、昨年、5年ぶりに先輩たちが奪還した優勝旗を死守すべき、御影高校との定期戦が中止になり、また、県の総体も開催できるかどうか、暗中模索の状況です。ここで気分を盛り上げて、進路実現に向けて邁進しようと意気込んでいた矢先のことで、出鼻をくじかれたような思いがしているのではないでしょうか。

 人生でもっとも伸び代の大きい高校3年間のなかでも、とりわけ著しい成長を遂げるはずの2年生は、その活躍の機会を先送りされたもどかしさを覚えているかもしれません。

 これからどうなるのかという不安やいらだちは、すべての高校生が感じています。その意味で皆さんは、全国の高校生とつながっていると言えます。そして、多くの高校生が、直面する危機をどう乗り越えるか、考え始めています。

 自分にとっての危機を乗り越えるためにどんな行動を起こすかは、危機をどう受け止めるかに左右されます。危機に対する認識、危機から何を学ぶかと言い換えてもよいと思います。

 皆さんは、日ごろ、日本の社会や経済、世界の経済、あるいは人類という視点でものごとを考えたことがあるでしょうか。もちろん授業ではあるでしょうが、日常生活の中で日本や世界、人類といった視点で考えを巡らす機会は滅多にありません。この危機は自分だけの危機ではない、日本社会全体の危機であり、世界の危機であり、人類にとっての危機です。今回の危機に直面して、私たち一人ひとりが社会や世界とのつながりの中で生きているということを改めて思い知らされました。こうした捉え方ができれば、おのずととるべき行動は見えてくるはずです。日本社会全体で危機を乗り越えるために、責任ある行動、節度ある行動をとってほしいと思います。

 ところで皆さんは、休校の間、どんな生活を送っていたでしょうか。日ごろは7:00には起床して登校していたのが、だんだん遅くなり、10:00に起きて、寝るのは深夜の2:003:00といった状況になっていなかったか、振り返ってみてください。もしこうした変化が起こっていたとすれば、それは、日々の生活を自ら律する自律の力が身についていなかったことになります。今回の危機は、皆さん一人ひとりにとって、自ら律し、自ら立つ、二つのジリツが試される試練でもあります。

 皆さんにとっては、予定していたこと、期待していたことがかなわない状況が続きます。こんなとき、油断していると、悪魔の3Dが忍び寄ってきます。悪魔の3Dとは「だって、でも、どうせ」の三つがセットになった言い回しです。これに取りつかれると、気力がなえ、何も手につかなくなってしまいます。危機から学び、「今何ができるか」「今何をすべきか」を、自分で考え、自分で行動を起こしてください。その自由は皆さんの手の内にあります。

 そして、社会全体でこの危機を克服し、皆さんが存分に活躍できる日が、一日も早く訪れることを願っています。