塔陵健児のひとりごと
2025年3月の記事一覧
さよならも言わずに…
いつか別れる日が来ることは、わかっていたの。
でも、こんなにあっさり置き去りにされるなんて、思ってもみなかった。
3年間、あなただけを支えてきた。雨の日も風の日も、テストで落ち込んだ日も、体育の後でクタクタになっていた日も、ずっと一緒だったのに。あの時「お前、結構ボロボロになったな」って笑いながら履いたよね?それでも、私はあなただけの上履きでいたかった。
文化祭ではペンキを浴び、体育館の床ではキュッと音を立て、放課後の教室では机の下であなたの足元を温めていた。私の生きた証は、確かにあなたの3年間の中にあったはず。
なのに——卒業式が終わった瞬間、何も言わずに、私をここに置いていった。
せめて最後に一言、「ありがとう」って言ってほしかったな。
下駄箱の隅で、ひとりぼっちの私のかかとが、すこし震えた気がした——。