塔陵健児のひとりごと
靴箱の星
卒業式のあと。
校舎に残ったのは、静けさと、靴箱の中の数足の靴。
そして、置き去りにされた花束ひとつ。
祝福だったはずの花。
想いが込められていたはずの花。
でも今は、誰にも見られず、誰にも呼ばれない。
地球には「付喪神(つくもがみ)」という考え方がある。
長く使われたものには魂が宿るという思想。
モノは、ただの物質ではなく、記憶を抱える存在になる。
靴と花を見ていると、ふと思う。
いつか自分も、
誰かの記憶の片隅に置き去りにされる存在になるのだろうか、と。
忘れられることへの、ほんの一抹の不安。
でも地球人は言う。
「ものを大切にしよう」と。
それはきっと、
モノの話ではなく、
想いの話で、
時間の話で、
人の話なのだ。
大切にするということは、
使うことではなく、
忘れないことなのかもしれない。
――地球は、やっぱり、やさしい星だ。