塔陵健児のひとりごと

においと香りと金木犀

中庭を歩いていたら ふっと甘い香りがした
金木犀(きんもくせい)だ
毎年この時期になると 僕はこの香りに足を止めてしまう

金木犀のにおいって 不思議だと思う
「におい」と言うと なんだか日常的で 
「香り」と言えば ちょっと大人びた感じがする
どっちの言葉を使うかで 
同じ空気の粒がまるで違う表情を見せる

テスト前で焦っているときも 
人間関係でちょっとモヤモヤしているときも 
この金木犀の香りをかぐと 
一瞬だけ時間が止まったような気がする
心の奥がすっと静かになる

僕はこの香りが本当に好きだ
芳香剤でも似たような香りはあるけれど 
やっぱり本物はちがう
風に乗って届くその香りには 
「季節」と「いま」と「僕」が確かに重なっている

金木犀の花が咲くたびに思う
ああ 今年もちゃんとここにいるんだなって

  

中間考査一日目。