令和2年度3学期終業式 式辞

 3学期の最終日にあたり、一言、あいさつを述べさせていただきます。
 皆さん、どのような3学期だったでしょうか? 学年の締めくくりとして、満足のいく3学期だったでしょうか。
 今月1日、36回生、232名が卒業されました。立派な卒業式で、皆、胸を張り堂々と、本校の誇りを胸に巣立っていかれました。必ずや、本校の3年間で獲得した力で、この変化激しく予測困難な時代を、心豊かに生き抜いていかれることと確信できました。
 在校生の皆さんは、いよいよ、学年が一つ上がります。2年生は最上級生となります。名実ともに、本校の看板学年です。視野を広げ自由な発想で、思う存分、学校生活を満喫してください。二度とない高校生活、二度とない18歳です。そして、卒業後に、どのような道に進むか・・・しっかり考え、必ず訪れる大切な一瞬、「勝負の時」に備えてください。
 1年生は2年生となり、後輩が入ってきます。楽しみですね。そして、うかうかしていられなくなりましたね。さらに学びを深めていってください。深めれば、またさらなる興味、関心、おもしろさ、疑問と出会えます。そしたらさらに深めてください。「学び問う」「問いを学ぶ」学問の喜びをとことん体感してください。
 部活動に入っている人は、しっかりと新入生を勧誘して、多くの後輩を獲得し、部活動を、そして学校全体をさらに盛り上げる中で、自らを磨いてください。
 部活動や習い事が大変で勉強ができません・・・この、できない理由を他に準備する発想ではなく、「部活や習い事があるから勉強も頑張れています!」、「勉強が忙しいから、濃厚で無駄のない部活、習い事が充実しています!」という、本来あるべき循環に、是非してください。私は自宅の自分の部屋に、「初心忘るべからず 回り続ける車輪は錆びず」という書を掲げています。私に多くのことを教えてくださった方が書いてくれた書です。もう、この方にこの世で再会することはかないませんが、毎日目にするこの書を通して、この方への感謝とともに、自らの生き方を戒めています。
 「事上磨錬」・・・私の好きなことばの一つです・・・「行動や実践を通じて、知識や精神を磨き上げる」ことをいうのですが、各教科、総合的な探求の時間、ホームルーム・生徒会活動・学校行事、そして部活動や習い事・・・確かに忙しいかも知れません。しかし、それらを実践・・・「知・考・行」の「行」まで進めていく中で、自らを高めていくことこそ価値があり、大切なことなのです。行動や実践を通じて、知識や精神を磨き上げる「事上磨錬」、覚えておいてください。
 さて、先日、3月8日には、神戸芸術センターにおいて、全国から引っ張りだこで、年間280本の講演をされておられる、岩崎由純さんの「ペップトーク」のお話を聴き、言霊、言葉の力の大きさを改めて知らされる機会を得ました。
 最後の、幼稚園児が10段の跳び箱を跳び越える映像がありましたね。彼一人っきりでのチャレンジなら、おそらく飛び越えるのは難しかったでしょう。何度も失敗し、涙を拭いながらチャレンジする彼を、応援しながら心配そうに見ていた周囲の友達が、彼を中心に円陣を組み、大きな声で、「出来る!出来る!出来る!」と声をかけてくれていました・・・そして彼は、見事に10段を飛び越えました・・・あのわずかな時間の中で、いったい何が起こったのでしょうか。「仲間がいる」、「一人っきりではない確かな感覚」、「信頼」、「勇気」・・・こんなエネルギーが、あの時、円陣の中で発生し、飛び交ったのでしょうか・・・とにかく確かなことは、“目には見えない大きなパワー”が動いた時間であったということです。あの様子を見て、皆さんは何を感じられましたか・・・
 学校は集団生活です。互いが互いにプラスのエネルギーを与えることで、一人では実現困難だと思われることを可能にしてしまうのです。本校で、深い“ご縁”があって出会った友達を大切にしてください。そして、声をかけあい力を合わせ、皆でレベルアップしていこうではありませんか。
 この世の流れ、さらに大きなスケールで言えば、宇宙の流れについて、皆さんはどのように考えていますか。私は、この世の中、宇宙全体は、善い方向へ善い方向へ、正しい方向、あるべき方向へ向かって進みたい、進もうとしているのだと、強く感じています。ですから、この偉大な流れに逆らい逆流する行為・・・人を傷つけたり憎んだり不幸を願ったり・・・これでは真の幸せはつかめないと思っています。・・・「利他の心」、孔子の「恕」の精神で他を思いやることこそが、善い方向、正しい方向、あるべき方向・・・目には見えない偉大な流れに沿ったものであり、自らの真の幸福感に繋がるものであると、堅く信じ、また実感しています。
 人を傷つけたり憎んだり不幸を願ったり、このように逆流するとき、私たちには大きなストレスがかかります。家で食事をしていてもお風呂に入っていても、全身の細胞が、宇宙全体が望む方向とは逆のマイナス方向への働きを続け、ホルモンバランスが崩れ、心身ともに疲れ、幸福感とは反対の状態に陥ってしまいます。
 私たちは、他の人の幸福を願い、力を合わせ、ともに向上していくことで、真の幸福感を得ることができるように創られているのです。人類は、そのようにして発展し、現在の高度な文明を獲得してきたのです。
もし、皆さんの中で、逆流の中に入っている人がいるようなら、まず、身近な人の為に何かを行ってみてください。その人から「ありがとう!」と、感謝の言葉が返ってくるでしょう。その、人から感謝された時の感覚・喜びを忘れないでください。私たちは、他の人の幸せに、自らが関われたことを実感できた時、最大の幸福感を得ることができるよう創られているのです。周囲が不幸になり、自分だけ幸せになることでは、真の幸福感を得ることが出来ないように創られているのです。
これは、日本の文化の中にも表れており、人からいただいた物を分ける「お裾分け」や、身内の中で起こったおめでたいことや喜びを独り占めせず周囲の人に分ける「内祝い」などは、皆さんにも馴染み深い習慣ではないでしょうか。
 明治時代の文豪、幸田露伴が、『努力論』の中で、「幸運な人を観察していると、『分福』が見られる。『分福』とは、幸福を人に分け与えること。自分ひとりの幸福はありえない、周囲を幸福にすることが、自らの幸福に繋がる」ということを述べています。
どうか皆さん、学年が上がる大きな節目を迎えます。これまでにまして、互いを思いやる心で皆とつながり、自らを高め、魂を磨き、学校全体で向上していこうではありませんか!
 それでは、明日からの15日間、健康に留意し、充実した時を過ごしてください。普段、なかなか会えない人と会うことも大切ですが、まずは、じっくりと、自分自身と会って語り合ってください。
 4月8日の始業式、またここで、元気な笑顔で会えることを楽しみにして、以上、令和2年度第3学期終業式の「式辞」とします。

令和3年3月23日

    兵庫県立須磨友が丘高等学校校長  川崎 芳徳