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生物部会ではこんなことをしています

お知らせ 遺伝子実験の援助

近年のバイオテクノロジーの発展は凄まじく、最近では高校でも分子生物学的な手法を用いた遺伝子に関する実験の報告も見られるようになってきました。

しかしながら、遺伝子に関する実験を行う場合、教員としては専門的な知識と技術、ピペットや電気泳動層などの設備、制限酵素やDNAリガーゼなど高価な試薬など、多くの高いハードルがあります。 

このようなハードルを少しでも下げるために、東京大学農学部では、バイオテクノロジー実験の経験がない高校の先生方を対象に、実験手法や実習法のトレーニングの機会を提供し、実施の援助をしております。

やってみたいけど、機器がない、試薬がない、という先生方、これを機会に取り組んでみませんか? 

詳しい情報はこちらからどうぞ

遺伝子実験援助_ゼミナール2023_usui.pdf

お知らせ カードゲームのご紹介

「生物は暗記が多く、覚えるのが大変だ。」そんな生徒たちの声をよく聞きます。

生化学や免疫分野では、物質名や細胞の名前、それぞれの働きや役割を関連付けて理解することが重要ですが、種類が多く壁を感じてしまう生徒も多いのではないでしょうか。

 

そのような時に試していただきたいのが、生化学入門カードゲーム「どうかな 同化な!?生化学」免疫カードゲーム「Immuno!」です!

「どうかな 同化な!?生化学」は単糖類やアミノ酸など基本単位となる有機物が糖類やタンパク質などの高分子化合物に合成される過程をカードゲームにしたものです。

免疫カードゲーム「Immuno!」は大人気免疫細胞アニメ「はたらく細胞」の画像を使用した、免疫細胞同士のつながりの理解を助けるためのカードゲームです。

共に多くの学校から実践報告が集まっています。学校での利用に限って先生方にお分けしています。ご興味のある先生方、詳しい情報はこちらからどうぞ。

カードゲーム案内_ゼミナール2023_usui.pdf

若手中堅教員のための実験研修会 その3

兵庫県立青雲高等学校 松本 誠司 先生を講師としてお招きし、「イベントや出前授業で使える化石を用いた体験講座」を行いました。

 

まず、出前授業の心掛けとして、高校生が主体となり、小学生・中学生に対して出前授業を行うために、教員が行うべきは「レール」を敷くこと、「教育的視点」をもとに地域の方と事前に打ち合わせをすることが大切とのお話がありました。

 

実際に化石発掘を行いました。化石をハンマーで割ってみたり、様々な道具で削ってみたり。触ってみないとわからないような感触、実際手にとってわかる出前授業だからこそ感じ取れる実感があると思いました。化石を発掘した後、種類を調べ、特徴を記録し、ケースなどに保存することで完了です。

化石を発掘するとき、ハンマーで強く叩きすぎてヒビが入ってしまった時、どのように対応すべきかなど、実際に行っているからこそのノウハウを伝えていただきました。

小学校の出前授業では時間的な関係で難しいですが、化石の発掘と分析により、古環境の推定も行える。木の葉の化石や現在の地形や環境の情報から、化石が発掘された場所が古塩原湖であったことや近くで火山活動が活発であったことなど、1つの化石から様々な情報が読み取れることを紹介してくださいました。

 

『小学生相手の体験だと「発掘できてよかったね」で終わってしまうことが多い。
 短時間で完了しなければならないイベント(科学の祭典など)ではそれでよいが、
 出前授業ではそうではなく、「児童に何を気づかせたいか」と、「児童のアウトプット」が大切』

『結果の予想(仮説)を立てて共有してから、実験すること』

『「自分の考えと他者の考えの”違い”」や「自分の考えと実験の結果との”違い”」を考え話し合うことが大切』

と繰り返しおっしゃっていました。

 

化石の同定や情報収集はこちら「塩原化石教育プロジェクト」がおすすめです。ぜひご参照ください。

今回会場には多くの化石を展示していただきました。これらの化石の多くは市立西宮高校 久保和宏教諭 からお借りしたものです。ご利用したい方はぜひ問い合わせてみてください。

  

   

 

最後に以下の写真のような、講師が買い集めた各鉱物(や宝石)や、サメの歯の化石などをお土産として参加者にプレゼントされました。

 

若手中堅教員のための実験研修会 その2

兵庫県立千種高等学校 筏 泰介 先生を講師としてお招きし、「アユの解剖」の研修を行いました。

アユの生態に関する豆知識や実物を用いた観察を教えていただきました。魚介類の解剖を理科学習の材料とすることには歴史があり、明治・大正時代の教科書にもイカや貝の解剖図が掲載されています。

アユは群れとして行動する個体もいれば、単独で縄張りを形成して行動する個体もいます。教科書にもその生態や体長との関連が掲載されるほど、よく調べられています。鮎釣りは揖保川が発祥の地とされていて、兵庫県との関わりも深いそうです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本日の研修では、アユを実際に解剖し、腎臓と耳石を観察しました。アユはあらかじめ麻酔にかけています。

   

 

参加者の先生方も写真を撮りながら、熱心に観察に取り組んでおられました。

   

魚類は何を食べるかによってエラなど微細構造が異なる場合があるそうです。腎臓や耳石だけではなく、心臓や生殖巣、脳など様々な臓器の観察にも利用できるとのことです。ぜひお試しください。

 

 

若手中堅教員のための実験研修会 その1

兵庫県立明石高等学校 薄井 芳奈 先生による「豆苗を用いた重力屈性とアミノプラストの観察」の研修を行いました。

新学習指導要領では「見出して理解する」というフレーズが多用され、実験観察の仕組みの理解に結びつける体験が以前にも増して求められています。今回は植物ホルモンの作用を確かめる実験だけでなく、「刺激を感受する仕組み」に関わる実験を取り入れて研修してくださいました。

 

① 「刺激の受容」:豆苗を用いたアミロプラストの観察

アミロプラストはデンプン粒を多く含んだ色素を含まない色素体で、根冠にある「コルメラ細胞」や茎にある内皮細胞である「デンプン鞘細胞」に含まれています。密度の大きいアミロプラストが位置を変えることで重力の向きや器官の傾きの受容に関与しています。

 今回は根冠のコルメラ細胞、茎の内皮細胞に含まれるアミノプラストをヨウ素液で染色し観察しました。薄い切片を作成するために、寒天を利用して組織を固定する方法など、様々な工夫を教えていただきました。

② 豆苗を用いた茎頂分裂組織の観察

根端分裂組織の観察はよく行われますが、茎頂分裂組織の観察はそれほど多く行われていないように思います。豆苗はその観察材料として非常に簡便に観察できるそうです。

豆苗の先端付近の膨らみを開いていくと茎頂が見えてきます。

この組織を切り出し、酢酸で固定、染色液と塩酸で解離・染色を行い、観察を行います。細胞が小さく詳細を観察するには不向きかもしれないですが、ネギ根の根端分裂組織の観察同様、非常に簡便に分裂細胞の観察を行うことができました。

こちらにも実践が載せられています。ぜひご参照ください。

「高校生物 実験教材の広場」
https://bioeve88.web.fc2.com/

また、神戸市内の施設実験室を拠点に、高校教員が集まって実験や授業の工夫を共有する会であるKOBE金曜EveLabo を主宰しており、ブログで情報発信をしておられます。ぜひご参照ください。

「KOBE金曜EveLabo」
https://bioeve88.blog.fc2.com/

 

 

 

 

研究論文、実践報告 募集中

1 生物部会誌への研究論文及び実践報告の原稿について募集中です。

2 応募方法
部会誌への掲載を希望される方やお問い合わせは、市立西宮高校(0798-74-6711)の越谷までお電話ください。

3 締め切り  令和5年2月末

4 詳細は生物部会の部会誌に掲載のものをご覧いただくか、上記までお問い合わせください。

また、ご一報いただいた方には、別途、作成様式を記したファイルと提出先をご連絡します。

生物部会誌VOL.46 研究論文及び実践報告 募集中

1 生物部会誌vol.46への研究論文及び実践報告の原稿について募集中

2 応募方法
部会誌への掲載を希望される方は、県立西宮今津高等学校 教頭 田中優至までお電話かメールでご一報ください。
   メール:Yuuji_Tanaka@pref.hyogo.lg.jp
TEL :0798-45-1941

3 締め切り  令和4年2月末

4 ご一報いただいた方には、別途、作成様式を記したファイルと提出先をご連絡します。

現代生物ゼミナール開催(報告)

2021年12月10日、県立人と自然の博物館のホールをおかりして、第161回現代生物ゼミナールにおいて、京都大学ウイルス・再生医科学研究所 准教授 宮沢 孝幸氏にご講演いただきました。

非常にパワフルなご講演で教員一同圧倒されました。

ウイルス学がご専門とあって新型コロナウイルスに関するお話の中で、「ウイルスに関する正しい知識を身につけて、経済と両立した感染対策を行うべきだ」ということを繰り返しおっしゃられていました。

また、動物からヒトへウイルスが感染することから、動物が持つウイルスの研究により、ヒトが今後感染するであろうウイルスを予測していく時代に向かうことが大切だという言葉が特に印象的でした。

また、ウイルスと哺乳類の進化の関係に関するご講演では、ウイルス由来の酵素が哺乳類の初期発生時の着床に働いていることから、当時のウイルスの感染が胚の着床の効率を上げ、哺乳類の進化に関係しているという内容でした。

宮沢准教授の進化に関するさまざまな仮説を交えて、非常に興味深い講演会となりました。

ご多忙の中、遠くから足を運んでいただき、ありがとうございました。

教員向け研修会 報告

2021年12月9日、神戸商業高校にて、理化学研究所で行われている「成体の脳を透明化し1細胞解像度で観察する技術」ついて講義がありました。

以下の写真はマウスの透明肺です。左はオレンジの染色液で染められています。


透明化試薬
https://www.tcichemicals.com/JP/ja/c/10431

顕微鏡も開発したとのお話がありました。
観察対象の厚みがあるため、既存の顕微鏡ではピントが合わなかったり、観察できない、ということがありました。
そこで、横から光を当てたり、下側カメラでピントを自動を合わせることで、様々な厚みの部分の平面写真が撮影できる、ということでした。
つまりまさにCTスキャンのような写真が撮影できる、ということでした。

この技術と、細胞を観察する技術を組み合わせ、脳全体の細胞すべてを階層的に観察することができる、というまさに夢でも見ているかのような内容でした。

面白いはもちろんのこと、衝撃を受ける内容でした!

CUBIC-X によるマウス全脳全細胞の”点描画”
http://sys-pharm.m.u-tokyo.ac.jp/cubic-atlas.html
リンク先に細胞の核をひとつひとつ点描画した動画があります。