校長室より
理科の散歩道8
今回は、次の問題を考えてください。
【問題】
令和3年1月8日 令和2年度 3学期始業式 式辞
令和2年度 3学期始業式 オンライン&校内放送にて
皆さん、明けましておめでとうございます。いい年を迎えることができましたか。今日は3学期の始業式です。2学期の終業式でも触れましたが、「ジタバタする」ということについて話をしてみたいと思います。
人生という長い道のりの中では、遅かれ早かれ誰もが大きな壁にぶつかります。途方もない大きな壁を前に、悩んだり、苦しんだりします。学校を卒業したばかりの新入社員を対象とした入社式などで、会社の社長や会長などがよくこんなことを言ったりします。「今日からみなさんは社会人です。いつまでも学生時代のような気分でいてもらっても困ります。社会人になると、いろいろな困難な壁、大きな壁にぶつかります。けれども、壁にぶつかっても決してくじけることなく、頑張って乗り越えていってください。」ただ頑張って乗り越えろと言われても自分の力では到底乗り越えられないこともしょっちゅう起こります。もっと言えば乗り越えられないもののことを壁というのです。では人生でも、仕事でもこれから直面するであろう大きな壁を前にしたとき、どうすればいいのでしょうか。そこにはこれが正解というものはありません。ただある人はこう答えました。「大きな壁にぶつかったときに、大切なことはただ一つ。壁の前でちゃんとウロウロ、ジタバタしていること。ちゃんとウロウロ、ジタバタしていれば、たいてい大丈夫。」
ここで大事なのはどうしよう、どうしようと、とにかく立ち止まらずに壁の前を行ったり来たりすることです。そうすれば偶然、壁の下に小さな穴が見つかったりすることがある。その穴を一生懸命掘っていくと、わずかに通り抜けられるくらいのトンネルができたりする。そこに勇気を持ってもぐり込んでもがいているうちに壁の向こうにたどり着いたりすることがある。その穴は行動せずに立ち止まっていただけでは見つからなかったかもしれません。また何日も何日もウロウロしていたら、突然壁に亀裂が走ってガラガラと勝手に崩れてしまって壁の向こうに行くことができた。また偶然ヘリコプターがやってきて、そこからロープが降りてきて、それに必死につかまっていたらいつの間にか壁の向こう側に連れて行ってくれた。
壁の前でちゃんとウロウロ、ジタバタしていると、いつかそんなことが起こります。ときには誰かの力をかりて試練をくぐり抜けて行くことができます。
12月24日 令和2年度 2学期終業式 式辞
令和2年度 2学期 終業式 校内放送にて
皆さん、おはようございます。新型コロナウイルス対応に追われた一年でしたがまだまだこれからが正念場です。正月という大事な行事を各ご家庭で迎えられることだと思いますが、十分気をつけてこれからの時期を過ごして下さい。今日は2学期の終業式です。期末考査も終わってほっとしているときだと思いますが、「勉強する意味」について話をしてみたいと思います。
こんな質問があったそうです。「なぜ勉強しないといけないんですか。勉強して将来役に立つことが本当にあるんですか。自分には勉強する意味がわからないからする気がしない。」みなさんはどう答えるでしょう。
「勉強することは必ず将来役に立つ。勉強することで筋道を立てて考えることができるようになれば、将来、仕事にも生活にもぜったいプラスになる。」そんなふうに答える人もいるかもしれません。
ただある人はこう答えました。「学校で勉強していることで、社会に出てそのまま役に立つことなんてほとんどない。」私は理科の教師ですが、高校で習う数学が今解けるかというと、解けないことの方が多いと思います。漢字テストも自信がありません。世界史も日本史も覚えていません。学生時代の勉強をすっかり忘れてしまった私ですが、だからといってそのことで日々の生活で困っているわけではない。
あまりみなさんを悩ませてもいけませんから結論からいうとこうです。「勉強していろいろなことがわかるようになるということもあるが、本当はわからないことがたくさんある。勉強はわからないということに慣れる練習をしている。」
学校を卒業して社会に出ると、毎日が本当にわからないことだらけです。どんなふうに仕事をすればよいのか。将来の人生設計をどうすればよいのか。悩みは尽きません。筋道を考えてよく計画し、行動しようとしても、作戦通りにいかないことがほとんどです。そもそも作戦や戦略を立てて何かをすることが成功するのは、社会の仕組みやルールがよく整備されていて、その中身を完璧に理解できているときだけです。でも社会はそれほど完璧ではない。いろいろなことが複雑に絡み合っている。筋道を立てようとしても、立てようがない。
だとすればよくわからない社会を毎日生きる上で最も大切なことは何か。それは「わからない」ということで簡単にあきらめないことです。逃げ出さないことです。別の機会にまた話をしますが、逃げ出さないでその場でジタバタする(ウロウロする)ということです。
「わからない」から不安だとか、つまらないとか思わない。むしろ「わからない」からおもしろいと思えるかどうかです。
私の話は以上です。
理科の散歩道7
毒 「食い合わせ」とは
「食い合わせ」という言葉を辞書で引くと、「2種類以上の特定の食物を同時に食べて中毒を起こすこと。また、その食物のとり合わせ。」(旺文社 国語辞典)とあります。昔の人はいろいろな食い合わせを残しています。いろいろと調べてみました。代表的なものには次のようなものがあります。
「ウナギ-梅干し」、「スイカ-天ぷら」、「ニンジン-大根」、「タコ-ワラビ」、「そば-タニシ」、「カニ-氷」、さるかに合戦からきているとは思えませんが、「カニ-柿」というのもあります。
実に様々な組み合わせがあります。ただ、この21世紀の世の中にこれらが残っているということは何か理由があるはずです。これらの組み合わせをよく見てみると、腐りやすいものが含まれていたり、「スイカ-天ぷら」のように「水-油」といった混ざりにくいものになっている場合が多いということです。昔は冷蔵庫などもなく食品の保存状態はよくありませんでした。食品自体が腐っていたり、体力が落ちているときに混ざりにくい組み合わせのものを食べて体調を崩すことは大いに考えられます。ただ食品が新鮮で体の調子も十分なときに、これらのものを食べて「毒」ができるということはありません。
ところが本当に毒ができる食い合わせがあります。それはジメチルアミン(漁港などでよく嗅ぐ魚の匂いのもと)と亜硝酸(野菜などに含まれる成分)の組み合わせです。これらを一緒に食べると、胃の中の酸性の条件下で、発ガン性や急性毒性の高いジメチルニトロソアミンが生成します。サンマの塩焼きと大根おろしの組み合わせを考えてみます。サンマ、大根はそれぞれジメチルアミン、亜硝酸を成分として含んでいるので大変です。しかし、このジメチルニトロソアミンの生成を止める特効薬があります。それがビタミンCです。実は生の大根にはこの成分も多く含まれており、大根おろしを食べればこの毒の生成が抑えられます。ビタミンCは果実や緑黄色野菜に多く含まれています。食事のときにこれらのものを食べることは、ガンを予防するためにも大変効果的かも知れません。
理科の散歩道6
砂金掘り ロマンを求めて
今から約150年ほど前、アメリカ西部で次々に金鉱が発見されゴールドラッシュが起こりました。金はいつまでも変わらないその美しい輝きゆえに多くの人を引き寄せます。「金山を掘り当てて大金持ちに」とはいかなくてもその金が川で簡単に手に入るとなればどうでしょう。何だかワクワクしてきます。私も数年前に川での「砂金掘り」を教えてもらって以来、時々出かけて行くようになりました。
ただ川ならばどこにでもというわけではありません。砂金が集まるポイントがあります。理想的な場所は大きく川が蛇行しているその内側、そして水面から基盤岩が出ているところです。そういった場所の岩の隙間や草の根っこの砂や泥の中に含まれています。理由は単純です。それは金の比重がとても大きいということです。金の比重は19.3もあります。これだけ大きいと少々のことでは流されません。大雨などで川が増水し、流速が大きくなったときにようやく移動し岩の隙間や草の根っこの中にもぐり込みます。その後、比重の軽い砂や泥はどんどん流されても砂金はしっかりとそこに残ります。それにもともと金はごく僅かしかありません。河口付近にも当然存在するはずですが、そのような場所では大量の土砂に埋もれてしまいとても見つけられません。
「砂金堀り」は岩の隙間や草の根っこの砂や泥を集めることから始まります。集めた砂や泥はザルでこして、中に入っている小石などを除いていきます。そして残ったものを「パンニング皿」(砂金採集用の特殊な皿)に入れて、ゆすりながらていねいに軽い砂や泥を川の流れを利用して流していきます。この作業を続けていくとやがて黒い砂鉄だけが残ります。砂鉄は砂よりも比重はかなり大きい(約5~6)ですが、砂金の比重はその砂鉄の約3倍です。砂鉄を注意深く動かしていくとその中にじっとして動かない金色に光る砂金が見えてきます。
直径は0.1mm程度もあればいい方で、長時間の作業でも数粒しかとれません。一日のアルバイト代がこれではとても生活できません。しかし普通の川でも砂金がとれるというのは「ロマン」です。以前、テレビの特番で「埋蔵金探し」をよくやっていました。あの番組のように見つければ大金持ちになるわけではありませんが、全身筋肉痛になりながらも自分で見つけた砂金にはとても愛着を感じます。
ただ川には危険な場所も多く存在しています。12年前の神戸市灘区の都賀川での事故のように急に増水する可能性も十分あります。天候にも十分気をつけて、また決して子供達だけで行かないようにして下さい。