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2020年7月の記事一覧

理科の散歩道 浮沈子

 浮沈子
 青少年の科学の祭典が毎年各地で開かれていますが、その中で子どもたちに人気のあるコーナーの一つに「浮沈子」があります。兵庫県の物理の先生のオリジナルで魚の形をした醤油差しに重りとしてナットを付けたものがよく知られています。作り方は極めて簡単で、ペットボトルにほぼいっぱいの水を入れ、その中に沈まないように空気の量を調節した重り付き醤油差しを入れます。ペットボトルのフタを閉め、両手でギュッと横から押してやると醤油差しが沈んだり、浮いたりを繰り返し、ちょうど魚が上下して泳いでいるように見えます。小さな子どもにはとても人気があり、青少年の科学の祭典以外でもいろいろなところでよく見かけます。これは「パスカルの原理」という水の圧力に関する性質を利用したものです。水のような圧力をかけてもほとんど圧縮されない液体の場合、それが入った容器に圧力をかけると、その力は等しく全体に伝わっていきます。このため、圧力をかけたときに容器に穴が開いていると、そこから勢いよく水が飛び出していきます。おもちゃの水鉄砲もこの原理を応用したものです。「浮沈子」の場合は、圧力をかけたときに、醤油差しの中の空気が圧縮され、その分水が入って重くなるために沈んで行きます。何となく見ていると不思議な現象ですが、原理がわかってみるとなかなか面白いものです。これと似たような性質に「アルキメデスの原理」というものがあります。水の中にある重さのものを沈めるとき、それが押しのけた水と同じ重さの浮力を受けます。アルキメデスが金の王冠が本物か偽物かを調べるのに、お風呂に入っていてあふれ出したお湯からこのことを思いついたのは有名な話です。「・・・の原理」や「・・・の法則」というと何だか難しいことのように考えてしまいますが、身近な現象の中からいろいろな発見があるかもしれません。

理科の散歩道 ダイヤモンド

 いよいよ7月に入りました。タイトルにある神戸新聞日曜版の「理科の散歩道」ですが、3年生の生徒にイラストを描いてもらい先日掲載できました。それらを含めて理科に関する記事を不定期で出していきます。身近な現象に興味を持ってもらえればうれしいです。

 ダイヤモンド
 ダイヤモンドは四月の誕生石です。炭素原子から成る結晶で、地球内部の非常に高温高圧の場所で生成されます。現在ダイヤモンドが採掘されている場所はかつて高温高圧の状態であった地層が地表付近に出ているところで、ユーラシア大陸などの大陸に集中しています。ただ条件さえ合えば、日本でも採掘できる可能性はあります。例えば兵庫県の加古川中流付近は砂金の採集ができる場所として知られています。ただ一日中集めても少量しか採集できませんが、ダイヤモンドも同じように挑戦してみるのも面白いかもしれません。その採集法ですが、砂金は比重が大きいことを利用して、砂や砂鉄から分離することができます。これに対してダイヤモンドは油との親和性が大きいことから、含まれている岩石を砕いた際、油に吸収させて他の物質から分離します。商業レベルで採掘を行うのではなく、個人的な趣味として行うのならば思わぬ幸運が訪れることがあるかもしれません。
 以前「お酒からダイヤモンドを作る」ということが話題になりました。これはお酒の中に含まれるアルコール中の炭素原子を利用する方法です。これ以外にもアセチレンガスと酸素ガスから作る方法など、実験室でもある程度簡単に製造することができます。ただこのような手法で作られたダイヤモンドは、大きさも非常に小さく、黄色い色が付いてしまうために宝石として使われることはありません。
 ダイヤモンドといえば物質の中で最も硬いということがよく知られていますが、それ以外にも電気は通さないが熱の伝導性が非常に高いという性質があり、硬い物を切断するダイヤモンドカッターやレコード針、放熱材として広く利用されています。宝石として非常に大きな存在感を持っていますが、それ以外にも多くの可能性を秘めています。
 新型コロナウイルスの影響でいろいろなことに制約がかけられていますが、ダイヤモンドを自然の中から探してみたり、作ってみたりするのも面白いかもしれません。