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2024年1月の記事一覧

生物部会誌のバックナンバー、寄贈のお願い

生物部会誌のバックナンバーをお持ちで、当部会に寄贈してもいいという方の情報がありましたら、生物部会事務局 県立西宮甲山高等学校 田中優至
Tel 0798-74-2460  Fax 0798-74-2461

までご連絡ください。

もしくは、お近くの生物部会役員(理事)までご連絡ください。

詳細は以下です。

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このたびISSN(国際標準逐次刊行物番号)に生物部会誌を登録するにあたり、
バックナンバーおよびバックナンバーに関わる情報を下記のとおり収集しますので、ご協力をお願いいたします。

1 目的 
当部会が毎年発行している生物部会誌にある記録や活動、取り組み内容を広く周知する機会を増やすことで、当部会の活動をさらに充実発展させることに寄与する。また、部会の出版物を継続的に保存することを目的とする。

2 依頼内容
ISSNへの登録申請にあたり、生物部会部会誌のバックナンバーすべてを国立国会図書館のISSN日本センターに納本する必要がありますが、現状は事務局がバックナンバーを1部のみ保管しているだけのため予備がありません。


生物部会誌のバックナンバーをお持ちで、当部会に寄贈してもいいという方の情報がありましたら、下記問い合わせ先、またはお近くの生物部会役員(理事)までご連絡ください。詳細は、兵庫県高等学校教育研究会生物部会Webページにも掲載していますので、そちらをご覧ください。 

※ ISSN (International Standard Serial Number: 国際標準逐次刊行物番号)とは、「逐次刊行物およびその他の継続資料」(以下「逐次刊行物等」)を識別するための国際的なコードです。日本では、国立国会図書館がISSN日本センターとなっています。主要な図書館の蔵書目録やデータベースでは、ISSNによる検索が可能であり、逐次刊行物等の利用に役立っています。

現代生物ゼミナール開催(報告)講演会その2

「基礎科学としての現代生態学」というテーマで、兵庫県立大学 江崎保男名誉教授にご講演いただきました。

この公演では「現代生態学」を群集や進化、他の動物との相互関係、生物多様性など様々な観点から整理していただきました。

〇下部詳細の要点
江崎教授は、現代生態学を群集や進化、相互関係、生物多様性などの観点から整理し、ダーウィンの自然淘汰概念やドーキンスの「利己的な遺伝子」など進化に関連する概念に触れました。

また、生態学の主要な対象は「群集」であり、その変動安定メカニズムについて追求しています。具体的な例や研究を交えながら、生態学の近代史も紹介されました。

最後には、コウノトリの現状と未来についての展望も述べられ、特に人工巣塔の設置場所が生態系のバランスに影響を与える可能性について懸念が表明されました。

 

〇講演会内容の詳細
1859年にダーウィンが「種の起源」の中で自然淘汰の概念を提唱した。その約100年後の1976年にドーキンスが「利己的な遺伝子」の中で自己犠牲的な行動は進化せず、利己主義(例えばライオンの子殺し、カマキリの共食いなど)が進化を促すことを提唱した。ダーウィンは自然淘汰を通して生物が生き残っていくことを説いているが、ドーキンスは生き続けるのは遺伝子であり、遺伝子が仕向けているという発想を生んだ。高等生物の多くは親子で行動を共にする。このように親が子を大事にするのは、遺伝子が永遠に生きるために、一時的な乗り物である「からだ」を次々に乗り換えていくためだと考えることもできる。その他にもエルトンの食物連鎖の概念の提唱やハミルトンの近縁度による自身の遺伝子を残す仕組みの提唱を例に進化に関連した生態学の近代史をまとめていただいた。

 

生態学のメインターゲットは「群集」であり、「群集の変動安定メカニズム(変動しながらも絶滅することなく安定すること)」を生態学では追求している。様々な生物の「群集」が被食ー捕食関係や種間競争、寄生などの生物間相互作用を形成した結果、生態系を作り出している。2007年江崎名誉教授は著書「生態系って何?」の中で、生態系をダイナミックなジグソーパズルに例えた。種の絶滅はパズルのピースがなくなることであり、外来種の導入はピースを無理やり押し込むことである。共にパズル(生態系)の崩壊の危険性を示唆した。群集の変動安定を論じるときには、生物間相互作用だけではなく、生物群集を俯瞰して見ることの重要性を説いておられた。

 その他、多くの具体例や研究例をもとに現代生態学を整理していただいた。 

 

 最後に、コウノトリの現在と未来についての展望をいただいた。2005年に豊岡市のコウノトリの郷公園から試験放鳥されてから6000日以上が経ち、個体数は順調に増加している。現在、放鳥したコウノトリが巣を作るための人工巣塔は田んぼの中に立てられている。田んぼの中は捕食者に狙われにくいこともあり、捕食圧が自然状態よりも低く、個体数が著しく増加していくのではないか。その結果、昆虫やヘビなど、コウノトリの餌となる生物の個体数が減少し、生態系のバランスが崩れてしまうのではないかということを江崎名誉教授は懸念していた。例えば、人工巣塔を田んぼではなく、より自然に近い森林に設置していく方が良いかもしれないということも加えておっしゃられた。

 

 江崎保男名誉教授にはお忙しい中大変興味深い公演をしていただきました。ありがとうございました。

また、高田先生には記事作成にご尽力いただきました。ありがとうございました。
 
 

現代生物ゼミナール開催(報告)講演会その1

甲南大学理工学部生物学科の渡辺洋平教授に「タンパク質の形とはたらき」というテーマでご講演いただきました。

 

〇講演内容の要約
教授はタンパク質の立体構造と機能の密接な関係について説明し、熱や酸・塩基に晒されるとタンパク質が変性し、その結果生命機能に支障をきたす可能性があることを指摘しました。
この問題に対処する手段として、分子シャペロンが注目されており、その働きを「かご」と「ふた」のような構造を利用して説明しました。

分子シャペロンには様々な種類があり、熱変性や凝集したタンパク質の解除など、異なる働きが存在することが強調されました。
その研究は分子遺伝学的手法や構造解析を通じて進められ、例えば酵母菌の分子シャペロンを破壊すると熱耐性が低下することが示されています。

最後に、分子シャペロンの研究が医療への応用につながる可能性があり、特にアルツハイマー病への治療に期待が寄せられていることが述べられました。
アミロイドの凝集がアルツハイマー病型認知症の要因であることを指摘し、分子シャペロンを活用して凝集をほぐすことが治療への新たなアプローチとなる可能性があるとされました。

 

〇講演内容詳細
タンパク質の立体構造と機能は密接に関連している。熱や酸・塩基に晒されると、タンパク質は本来の立体構造を保つことができなくなり、失活する。例えば、細胞に熱処理を与えると、細胞内のタンパク質の立体構造が壊れ、細胞の生命活動が行えなくなることが知られている。また、卵の白身や黄身が固まるのも、タンパク質の熱変性やその後の凝集が原因である。このようなタンパク質の変性は体内でも生じることがあり、生命機能に支障をきたすことさえある。

 

そこで注目されたのが分子シャペロンだ。分子シャペロンは「かご」と「ふた」のような構造をしており、「かご」の中に立体構造が崩れたペプチドを折りたたむことで、タンパク質のフォールディングを助けている。

 

分子シャペロンには様々な種類がある。ある種の分子シャペロンは通常熱変性してしまう条件でもタンパク質の立体構造を保たせる働きがある。また、別の種の分子シャペロンは伸びているヒモ状のタンパク質を折りたたむ働きをしている。さらに別の種の分子シャペロンは凝集したタンパク質をほぐす働きをしている。分子シャペロンは様々な面でタンパク質が立体構造を保つために働いている。

 

分子シャペロンの働きは分子遺伝学的な手法や構造解析によって明らかにされてきた。例えば、酵母菌の分子シャペロンをコードする遺伝子を破壊すると、熱耐性が下がることが知られている。また、大腸菌の遺伝子組み換え技術により大量に作成した分子シャペロンを用いて、X線結晶構造解析やNMRを用いた解析、クライオ電子顕微鏡を用いた解析などによって、その立体構造と機能の関係が分析されている。

 

分子シャペロンの研究は医療への発展、特にアルツハイマー病への治療が期待されている。アルツハイマー病型認知症の方にみられる老人斑にはアミロイドの凝集がみられることが知られている。分子シャペロンの働きをうまく利用することで、このような凝集をほぐし、アルツハイマー病の予防や治療に発展できる可能性が期待されている。

 

渡辺洋平教授にはお忙しい中大変興味深い公演をしていただきました。ありがとうございました。

また、高田先生には記事作成にご尽力いただきました。ありがとうございました。