〔本部事務局〕
兵庫県立小野高等学校
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1.種類
・ 光学顕微鏡・・・生徒用顕微鏡もこの種類。位相差顕微鏡、実体顕微鏡、解剖顕微鏡、鉱物顕微鏡など
・ 電子顕微鏡
2.構造と各部の働き
(以下顕微鏡といえば生徒用の顕微鏡を指す)
・鏡脚‥‥顕微鏡の最下部にあって鏡基全体を支える
・鏡柱(アーム)
・ステージ‥‥プレパラートをのせる水平な台
・鏡筒‥‥接眼レンズと対物レンズを連結
・レボルバー‥‥回転式の対物レンズ交換器
・調節ねじ(粗動ねじ・微動ねじ)‥‥鏡筒またはステージを上下してピントを合わせる装置。ピントを正確に合わせるには微動ねじを用いる。また、上下の際の硬さは粗動ねじで調節する。
・接眼レンズ‥‥鏡筒の上に差しこむ。対物レンズによって生じた物体の拡大実像をさらに拡大して虚像をつくる。
・対物レンズ‥‥鏡筒の下に取り付けて物体の第一像を結ばせる。物体の微細構造を正確に再現させる解像力は対物レンズが決定する。
*倍率
対物レンズの倍率と接眼レンズの倍率をかけたものが、顕微鏡の総合倍率である。たとえば
(ア) 総合倍率200倍=対物レンズ40倍×接眼レンズ5倍
(イ) 総合倍率200倍=対物レンズ10倍×接眼レンズ20倍
となり、どちらも倍率は等しくなるが、解像力の点からいえば(ア)の方が高く、微細な点まで見分けられる。
・反射鏡(ミラー)‥‥一面は凹面鏡(高倍率用)、一面は平面鏡(低倍率用)になっていて、必要に応じどちらの面でも自由にどの方向にも向けることができる。ただしコンデンサーの使用中は拡大がどうあっても平面鏡にするのが正しい。ただし光量不足の時は止むを得ず凹面鏡を用いて光を補うこともある。
・しぼり‥‥光束の太さを調節する。
・コンデンサー‥‥反射鏡で反射した光を集光器レンズを用いて集める。一般には生徒用顕微鏡にはない。
・光源装置‥‥反射鏡と差し替えて使う。本体内蔵のものもある。
・ストッパー‥‥鏡筒を下げる、または、ステージを上げる限度を決める。
3.操作
1) 運ぶときは、利き手で支柱をしっかり持ち、反対の手で鏡脚の下を支えていねいに取り扱う。
2) 検鏡の時には、両眼を開き利き手と反対側の目でのぞき、利き手でスケッチする。
3) 顕微鏡の前面または側面から明るい散光を受けるように机上におく。直射日光は受けない。
4) 反射鏡(ミラー)は倍率の低いレンズの時は平面鏡を、倍率の高い時は、凹面鏡(光が集約されて明るくなる)を使用するのが原則であるが常に平面鏡を用いてもよい。
5) 次にプレパラートをステージにおき、観察材料が対物レンズの真下になるように、クリップでとめる。
6) 粗動ねじを回して、ステージと対物レンズを近づける。この時、レンズがプレパラートに当たらないように、顕微鏡の側面から見ながら注意して近づける。
7) ピントを合わす時は、顕微鏡をのぞきながら粗動ねじを回してレンズとプレパラートを少しずつ遠ざける。
8) ステージの下側にあるしぼりを調節する。
しぼりを絞るほど光量は減るが、ピントの合う幅が広がり、コントラストがはっきりする。
9) 検鏡にあたっては、まず、低倍率の対物レンズを使用して全体を観察し、さらに拡大する必要がある時には、レボルバーを回して高倍率レンズにする。
この場合、レボルバーを回すだけでほぼピントが合う。微動ねじがある場合は微調整にこれを使用する。このねじは半回転以上回さないようにすること。
4.手入れの仕方
1) 留意点
・顕微鏡使用後はレンズが汚れていることが多い。その都度拭き取ることができれば最良だが、数が多いだけに見落としていることもあるので、定期的にレンズの汚れ、かびの除去、清掃と鏡体機械系の整備が必要である。分解できないタイプの接眼レンズはかびさせない。
尚、顕微鏡の構造や使い方は機種によって多少異なるので、取り扱い説明書を必ず参考にする。
・顕微鏡は湿気を嫌う。対物レンズ及び接眼レンズは、乾燥剤を入れたデシケーター内に保存することが望ましい。かびが生えないようにすることが大切である。
・顕微鏡には塵埃が大敵。清潔な柔らかい毛筆か、ブロアブラシの風やエアブロアーで塵を払う。
・すり合わせの部分(粗動装置の上下動部分・コンデンサーの上下動部分・複式メカニカルステージなど)には、特殊なグリスが使われている。この部分には時計油その他の機械油は使わないこと。
・レンズ拭きは、洗い晒しのガーゼやさらし布・レンズペーパーなどがよい。レンズクリーナークロスは洗濯も可。
例)ミクロスター(帝人) トレシー(東レ)
・顕微鏡修理工具セットには、接眼レンズを分解するため(自在コンパス)や粗動ねじを緩めるため(ペンチ型工具)の特殊な工具がある。
・レンズ・反射鏡・クリップなど、部品の購入はできるが、処分する顕微鏡があれば、使用可能な部品は取っておくと便利である。特にねじなど。
(2) 故障の状態と原因及びその処置
故障の状態 | 故障の原因 | 処置 |
鏡筒自然降下ステージ自然降下(ピントが合ってもすぐぼやけてしまう) | 粗動テーパーの緩み | 鏡筒の粗動ハンドルの軸は、テーパー軸になっており、検鏡者も自由に調節することが出来る。 新型は粗動ねじ奥にある。 まず、両手で左右のハンドルを握り、手拭いをしぼるよう(左右同時に時計方向に廻す)に静かに回転させるとハンドルは固く重くなり、その反対の方向にねじると緩み、動きは軽くなる。 |
粗動ねじがかたい | ①粗動軸の締め過ぎ、圧力のかけ過ぎ ②摺動面のグリスの固着 ③ハンドルのパッキン擦り減り |
①鏡筒自然降下(ステージ自然降下)の処置と逆の操作をする ②鏡筒をぬいて、固くなったグリスを取る ③新しいパッキンと取り替える |
対物レンズの汚れ | ① 接眼レンズをはずしたまま放置 ②レンズを指で触れたり、試料に接触させた |
①内部の塵は、ブロアブラシやエアブロアーを使う ②先端レンズのみきれいな布で拭く アルコールやレンズクリーナーはレンズの接着剤を溶かす恐れがあるので、使用は最小限にとどめる |
接眼レンズの汚れ | ① 使用後の整備不良 ②レンズ面を指で触れた |
きれいな布で拭く 分解した場合は組み合わせを変えないようにする |
レンズの傷 | レンズに塵やごみがついたまま拭いた | 修理不能 |
本体の汚れ | 99%エタノール、オーディオ製品のクリーナー、レンズクリーナーなどで拭く |
(3) レンズ清掃
ア. 接眼レンズ及び集光器レンズの拭き方
分解できるものは、レンズ単体に分解して拭く。
イ. 対物レンズの拭き方
対物レンズは、一般には分解できない。清掃は図3のように、先端のレンズを拭き、一番上のレンズの埃を飛ばすにとどめる。
先端を拭く場合、アルコールやレンズクリーナーはレンズの接着剤を溶かすおそれがあるので、最小限にとどめる。
ウ. 仮拭き
レンズの上にあるゴミ・埃を吹き飛ばし、布に少量の水をつけて拭く。
エ. 仕上拭きの要領
布やレンズペーパーは常に新しい面を使用する。
○ 分解した接眼レンズ(レンズ単体)の拭き方
布を折って、図(A)のようにレンズの中心を親指と人差し指の間にはさむ反対側の手で、レンズの縁をつまんで回しながら、図(B)のように中心から外側へ移行していく。この時、レンズについている汚れを残さないようにその汚れをまとめながら外側へ出してしまう要領で行う。少なくとも同じことを3回以上繰り返す。 |
○ 枠に入ったレンズの拭き方
面積の小さいところを拭くためには、ピンセットや竹串や先をとがらせた割り箸に布を細く巻き付け、先端に少量のアルコールをつけて、中心から周辺へ回しながら拭く。
(4) メーカーの顕微鏡整備
顕微鏡にはピントを合わせる際、鏡筒上下動式とステージ上下動式の二通りの方法があり、構造も大きく違う。鏡筒上下動式のものをメーカー(オリンパス)に出した場合のチェック部分は次のようなものがある。
* 修理の内容
1. 粗動アリの面+角すり合面のグリス(BCグリス)の交換
2. ピニオンメタル中+ピニオン軸(OPGグリス)の交換
3. 粗動ハンドル左、右のセルの交換
4. 回転板しぼりのグリス(OPGグリス)の交換
ステージ上下動式は、基本的には、鏡筒上下動式と同じでよいと考えられるが、メーカーにまかせる方がよいかもしれない。
顕微鏡の機械部分を不用意に解体することは絶対にしないこと。清掃には細心の注意をする。内部の汚れ等は販売店に相談する。
(5) 光源装置(照明)の工夫例