2021年2月の記事一覧
令和2年度卒業証書授与式 式辞
式辞
穏やかな早春の日差しを浴びた校庭の桜の木々も日増しに蕾をふくらませ、春の訪れを感じさせる今日の良き日、保護者の皆様のご臨席を得て、ここに第七十三回兵庫県立高砂高等学校卒業証書授与式を執り行うことができますことを、深く感謝申し上げますとともに、心よりうれしく思います。
さて、ただいま、卒業証書を手にされた卒業生二百三十六名の皆さん、改めて卒業おめでとうございます。高砂高校での三年間は皆さんにとって単なる時間の経過ではありません。特に二年生の後半からこれまで、新型コロナウイルスの影響でいろいろなことが大きく変わった一年でした。五月いっぱいまでの臨時休校、そして六月からの分散登校、何とか授業が行われるようになったのは六月の後半からでした。文化祭の中止、そして皆さんにとって最後の大会や発表会の中止。これまで当たり前にできてきたことの有難さを本当に実感させられました。発生から一年が経過してもまだまだ予断を許さない状況です。そんな状況の中でも皆さんは勉強そして部活動といろいろな制限のある中、本当によく耐えて頑張ってくれました。これは皆さんの努力はもちろんですが、支えてくれた家族や、友人、先生方の協力のお陰だと思っています。一人ではできなかったことも、支えてくれた人たちがいたから達成できた高校生活を忘れないで下さい。皆さんと一緒に行くことができた北海道への修学旅行は、私にとっても大切な思い出です。
卒業生の皆さん、新たな旅立ちには新たな決意が必要です。このような難問山積の中で、社会の荒波に船出するみなさんに、私は餞として次の言葉を贈ります。それは、「順境におごらず、逆境にくじけず」です。
順境の時は楽観的になり、つい調子に乗ってしまったり、強気になってしまいます。また、うまくいくと自分の力を過信し、傲慢になったり、うぬぼれや慢心にもなりやすいものです。うまくいっているのは決して自分だけの力ではありません。周囲の方々のお陰です。順境の時こそ、謙虚であるべきです。「おごるなよ 月の丸きも 一夜限り」満月も次の日からは欠けていきます。いつまでもうまくいくとは限りません。うまくいっている時ほど、決しておごらず、お陰さまという感謝の気持ちで慎むことを忘れないで下さい。 また逆境の時は悲観的になりやすいものです。辛いこ と、悲しいこと、苦しいこと、時には人生を投げ出し たくなることもあるかもしれません。そんな時は、弱気になったり、自暴自棄になってしまいがちです。でも、そこでくじけず、じっと我慢して耐える心の強さ を持って欲しいと思います。
「雪に耐えて梅花麗し」これは厳しい冬の寒さ雪の冷たさに耐えて咲く、梅の花の凛とした美しさを詠ん だ西郷隆盛の詩の一節です。厳しい寒さに耐えてこそ梅の花は一層きれいに咲きます。困難は自分を成長させてくれます。逆境は自分を強くしてくれます。「明けない夜はない」「やまない雨はない」我慢して頑張り続ければ必ず光は見えてきます。
そして順境であれ、逆境であれ、どんな時も誠実であることです。「至誠にして動かざる者、いまだこれあらざるなり」中国の孟子の言葉です。誠を尽くして人に接すれば、心を動かさない者はいない、という意味で吉田松陰も好んだ言葉です。誠実であることは信頼につながります。そして信頼はいつもあなた自身を守ってくれる、何ものにも代えがたい尊い財産になるのです。
順境にもおごらず、逆境にもくじけず、そしてどんな時も誠実な人であって欲しいと思います。
保護者の皆様、本日は、お子様のご卒業、誠におめでとうございます。心よりお慶び申し上げます。心身ともに大きく成長した卒業生の姿を見て、頼もしく思います。この三年間、本校の教育活動にご支援、ご協力をいただき、誠にありがとうございました。今後とも本校に対する変わらぬご支援、ご協力を賜りますよう、よろしくお願い致します。
卒業生の皆さん、いよいよお別れの時が来ました。皆さんが、三年間通ったこの学び舎、三年間歌い続けた校歌、三年間心に刻んだ思い出を胸に、それぞれの道を力強く歩んでくれることを、心から期待しています。母校である高砂高校は、いつまでも皆さんを応援しています。
新しい世界に羽ばたいていく皆さんに、幸多かれと祈念して、式辞と致します。
令和3年2月27日
兵庫県立高砂高等学校長 佐野 正明
令和3年2月4日 生徒集会でのお話です。
新型コロナウィルス対策として緊急事態宣言が3月7日まで延長されることになりました。感染状況によっては短縮される可能性もあるということですので、マスク対策、手洗い、三密を避ける行動をより一層行っていかなければなりません。
海外でも感染者の累計数が一億人を超えたりと暗いニュースが続いていますが、この封じ込めに成功した例として台湾が注目されています。中でもその対策の中心として注目されているのが、40歳のデジタル担当大臣のオードリー・タンさんです。1月30日放送の「読売テレビ」の教育・バラエティー番組である『世界一受けたい授業』にも出演されていましたので知っている人も大勢いると思います。台湾では国民全体にマスクを供給するためのマスクマップの作成や、トイレットペーパーの買い占めを防ぐための宣伝方法(誰でもお尻はひとつしかない)など様々な対策が取られ、封じ込めに成功しています。私が最もすばらしいと感じた点は「私は政府とともに働いている。政府のためにではない。」と言い切っていることです。そのためあらゆる必要な対策が取られている。ITに関しても、「ひとりも置き去りにしない」ために、マスクの供給に関してもデジタルだけではなくアナログな方法も使って、国民全体が購入できるようにしている、今話題の5Gも都市からではなく地方から進めていくことにより、ネット環境の良くない地域の学習環境や健康管理を促進する、デジタル技術も高齢者にも使いやすいように改良して、逆に使い方を覚えた高齢者が周りの人にその使い方を教えています。そして彼(彼女?)自身、自分をトランスジェンダーとカミングアウトしています。そのため男性だから、女性だからということから異なる視点で物事を考えることができる。つまりこれまでのやり方では解決が困難な問題に対しても新たな解決法のきっかけを見つけ出すことができるかもしれない。
先が見えない今の状況だからこそ、政府の方針だけに頼るのではなく、自分ができることに進んで取り組んでいく、そして周りに発信していく。一人一人は微力だが無力ではない。同じ価値観を持ち、目指す方向への共通認識があれば、共に話し合い、協力し合うことで社会を前進させることが可能になります。暦の上ではもう春になりました。私たちもここから新たなスタートを切りたいと思います。