この世で一番おもろい言葉
みんな元気かね。2組担任の岸田だよ。
実に大変なことになっているね。まこと逆境だ。しかし、次のことを覚えておいてほしい。逆境にできることなんて、君たちをを強くすることくらいしかないんだってことだ。
強さというのは内面の強さに他ならない。そして、内面とは言葉に他ならない。したがって、言葉をたくさん仕入れるのが大事ってことさ。
というわけで、みんな読書でもしようじゃないか。ここでは、おれがこれまでに出会った”必読書”を、このたび再読してきたので報告したい。
まずは『吾輩は猫である』(夏目漱石)だ。小学6年生の頃に初めて読んだんだが、今でもちょくちょく読んでいる。kindleでタダで読めるぜ。『こころ』がちょっとでも面白かった人は、絶対に読んだ方がいい。つまんなかった人も読むべきだ。授業が分かんなかった人にもおすすめかな。つまり全員読んだ方がいい。つまみ読みでもいい。もちろん通読してもいい。ちなみに、漱石の小説は『こころ』が一番面白くなく、『猫』が一番面白い(と思う)。
中学のときに『失われた時を求めて』(プルースト)を読んだ。いうまでもなくタイトルがなんかかっこよかったからだ。こちとら中2だったからな。もちろんさっぱりわからなかった。でも面白いんだ。退屈なんだが、面白いという記憶だけあった。で、今回再読したんだが、うん、これはあれですね。エッセイを読むつもりでいるといいですね。とにかくくどい文体と言われているんだけど、これはギャグだからね。長い溜めから鋭くギャグを入れるのがプルーストの芸風なんだ。
高3の夏、受験勉強をするふりをして図書館で『ドン・キホーテ』(セルバンテス)を読んだ。驚安の殿堂じゃなくて、「最初の近代小説」といわれている方だ。ファンタジーにはまりすぎたおじさんが自分も騎士だと思い込んで冒険の旅に出た。これだけでも控えめに言って面白すぎるが、後編には『ドン・キホーテ』を読んだという登場人物が出てきて、世に流通していた「贋作ドン・キホーテ」(今でいう二次創作だね)をこき下ろすという、「なんだこれ」的な展開が待っている。おれは物語に対して「あほか」とつっこみを入れるのが小説だと思っているんだけど、最初にしてこれほど小説らしい小説はないと思う。故・永田さんの古い翻訳しか持っていないんだけど、古めかしい言葉が実にたまらんですよ。
大学のときに読んだので一番面白かったのは『神聖喜劇』(大西巨人)だと思う。異様な記憶力を持つ東堂太郎が、理不尽に対していちいち反抗するという話だけど、小説としての面白さがこれでもかとつまっている。史上最高の小説のひとつだと思います。読んでください。
難解な言い回しとか文体が嫌な人も多いと思うが、そういうのは難しすぎて笑っちゃうと思って楽しむのが正しい作法だ。紹介したい書籍は他にも山ほどあるが、また今度会ったときに。
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