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人と自然科 ひとはく連携セミナー6回目 未来に残したい農業や農村の持つ魅力について学ぶ

  11月1日(金)人と自然科1年生学校設定科目『人と自然』の授業において、今年度第6回目となるひとはく連携セミナーが実施されました。(秋の農業祭や修学旅行など学校行事が続き、ご報告が遅れすみませんでした。) 

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 有馬高校人と自然科と県立人と自然の博物館の間では生徒のセミナー受講について協定を結んでおり、年間8回、県立人と自然の博物館を訪れ、博物館の研究員から自然や環境、動植物など専門的な講義を直接頂き、深く学んでいます。前回第5回目も『種子散布の生態学』をテーマに、藤井俊夫研究員より、植物が生息域を広げていく技ついて学びました。

 ひとはく連携セミナー5回目 植物の移動方法について学ぶ に関する記事はこちら

 第6回目となる今回は『未来に残したい農業や農村の持つ魅力』をテーマに、衛藤 彬史研究員より講義をいただきました。棚田やかばたのような農村風景、また生活文化とともにある食や行事など、農業や農村にはその地に根づいた様々な魅力があります。時代の移り変わりとともに失われつつあるそのような価値や美しさを次世代に継承していくための工夫や取り組みを紹介いただきました。

 

 まずは大豆に見る和食の今について説明いただきました。日本人食文化を考えるうえで味噌や醤油などの使用される大豆は和食の要です。しかしこの大豆のほとんどは海外から輸入されておりその自給率は20%で、ほとんどをアメリカやカナダから輸入しています。日本産の大豆は値段が海外と比較し高いですが大豆の文化を守るために、量より質を高める工夫を行っています。日本産の大豆の生産の減少が続けば、加工や調理に関する文化が引き継げなくなることが予想されます。

 

 次に農業を英語に翻訳した単語『Agriculture』の意味について考えてみました。『Agriculture』は『Agri-culture』つまり直訳すると『農-文化』です。ユネスコが選定する『世界無形文化遺産』に日本の和紙が2014年に、日本の和食が2023年に登録されました。和食は先ほど紹介した大豆などの生産と直結していますし、和紙についても原料はコウゾ・ミツマタ・ガンピなどが主に使用されています。その和紙の生産におけるコウゾの国産比率は5%程度といわれており、現在文化財の補修に使用する和紙も外国産が使われているのだそうです。(ちなみに絹の国産比率も0.2%以下という状況だそうです)このように日本の文化を守ることと農業は直結していることが分かります。

 

 そして多様な農村景観を守る取組みについても学びました。学校での授業でも学んでいますが、近年農業就業人口が減少し、農業は衰退しています。その結果美しい農村景観も失われつつあります。先生からは兵庫県別宮の棚田や徳島県にし阿波の傾斜地農業、静岡県伊豆市の水わさび伝統栽培など全国のユニークな取組みを紹介いただきました。

 

 最後に先生から『農業はクリエイティブだ』という言葉をいただきました。農作物の加工や調理で『家庭科』や『科学』を学び、生産をとおして『食育』を学び、地域のことを学ぶことで『社会・歴史』を学び、栽培をとおして『理科・生物』を学び、収量を分析することで『経済』や『数学』を学びます。他にも気象学や地質学・動物学・獣医学・・・このように農業とは『総合学習』なのです。

 

『農業を学ぶではなく農業で学ぶ』このことばがとても印象的で、まさに人と自然科が目指していることを先生に改めて再確認させていただけた内容でした。衛藤先生、興味深い講義をありがとうございました。次回のひとはく連携セミナーは、『人とのかかわりから見た三田盆地周辺の地形と地質』をテーマに、加藤 茂弘究員より講義をいただく予定です。地元三田市の環境が学べるよい機会となりそうですね。