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人と自然科 ひとはく連携セミナー4回目 持続可能な農業について学ぶ

 9月16日(金)人と自然科1年生学校設定科目『人と自然』の授業において、今年度第4回目となる人博連携セミナーが実施されました。『人と自然』の授業では年間8回、県立人と自然の博物館を訪れ、博物館の研究員から自然や環境、動植物など専門的な講義を直接頂き、深く学ぶことができます。

 第4回目となる今回は、『持続可能な農業への転換~求められる技術と体制について~』と題して、衛藤 彬史先生より講義をいただきました。

 

 昨今『サステナビリティー』『持続可能』『SDGs』という言葉を良く聞くようになりました。人間活動による環境への影響と資源の持続可能性への危機感がこれまで以上に高まる中、あらゆる分野で環境配慮への転換がより実効性を浴びてきています。それは農業の世界も例外ではありません。むしろ人と自然の接点となる生産現場としてこれからの農業のあるべき姿について講義を聴きながら考えました。

  まず農業は環境に良いのか考えました。学校の授業でも学びましたが、農業は食料生産だけでなく、大気の浄化や洪水の防止、景観の維持など様々な機能があります。これを多面的機能と言います。一方で畜産分野では、メタンガスを発生したり、家畜のエサを確保するために大量の穀物や水を必要とします。データでは、世界の温室効果ガスの16%を家畜が出すメタンガスが占める、1kgの牛肉を生産するために約11kgの穀物(エサ)と20000Lの水が必要といわれています。

 さらに日本の主食であるお米の栽培中にもメタンガスが発生しています。田んぼに水を張ることで土中の酸素量が減り、メタン生成菌が活発になり、夏に行われる中干し(田んぼの水を一定期間抜く作業)の時、一気に空気中に放出されます。

 また、肥料においても長く効果を持続するためのコーティングの素材としてプラスチックが使われているものもあり、海洋マイクロプラスチックの輩出につながっています。このように農業は環境に負担をかけているという一面もあります。

 

 これらのことを考え、これからの農業に求められる技術として、代替肉のダイズミートへ転換する、家畜から出るメタンガスを減らすために『カギケノリ』という海藻を活用する、稲作の中干しのタイミングを早めたり、期間を長くするなど、環境に配慮した新技術がどんどん確立しています。さらに、農業と森林(林業)を同時に行う『アグロフォレストリー』、異なる作物を計画的に作付けしていく『輪作』の活用、省力化の効果も期待できる『乾田直まき栽培』など世界では環境に負荷をかけにくい栽培方法も実践されています。

 現在の日本の農業は高齢化や後継者不足など様々名問題を抱えていますが、工夫によって乗り越えられる。生産者も消費者も意識を変えてこれからの食と農を作っていかなければならないという必要性を感じた2時間でした。生徒の『農業はメリットばかりでなくデメリットもあるが、デメリットは解決策を生み出せばメリットにつながる』という感想も印象的でした。

 衛藤先生、大学受験を控える3年生にも聞かせたくなるほど、様々な視点から現在の農業に切り込んだ興味深い講義を本当にありがとうございました。次回は『六甲山地と三田盆地の地形・地質と人との関わり』と題して、加藤茂弘先生から講義をいただく予定です。