令和2年度第1学期終業式 式辞

 おはようございます。校長の川崎芳徳(かわさき よしのり)です。一学期の最終日にあたり、一言あいさつを述べさせていただきます。

 改めてフルネームを述べさせていただいていますのは、まれに、皆さんが人生にとって大切な面接試験を受けられる際に「高校の校長先生のお名前は?」って聞かれることがあるんです。「いやー えーと 知りません」・・・「学校長のお名前ですよ」なんて、ちょっと意地悪な質問ですよね。でも念のため、川崎芳徳です。

 さて、3月以降、これまでに経験したことのない時間を過ごされましたね。今なお、猛威を振るっている新型コロナウイルスの感染拡大により、まだまだ予断の許されない、なかなか通常通りの学校生活を送ることができない状況です。

 そのような中、皆さんが「置かれている環境下、今、できることをやっていこう」という姿勢で、家庭でも、学校でも、感染拡大防止対策に心がけながら、しっかりと取り組んでこられたこと、大変嬉しく思っています。

 私は、今年4月に本校へ着任しましたので、ようやく、皆さんの登校が可能になった時、正門で挨拶を交わしながら、「表情がいいなー」「明るく素直な感じだなー」という「第一印象」を持ちました。たった一言、「おはようございます!」だけのキャッチボールでの第一印象ですが、そこにこそ、皆さんがこれまで培ってこられ、知らず知らずに全身から発しているエネルギーがあり、それを受けての、私の「第一印象」ですので、実はこれはとても重要で、意味のあることなのです。

 今日は、少し、朝の挨拶を含めた、人類を人間たらしめている「言葉」についてお話しさせていただきます。

皆さんも、これまでに、「言霊(ことだま)」というのを聞いたことがあると思います。「言葉」には、霊的な力が宿っていると言われています。

昨年、令和元年11月30日の土曜日に、ある方の講演を、新神戸駅の南側にあります神戸芸術センターで、兵庫県全ての公立高等学校の校長先生並びにPTA役員、本校では育友会役員の方々ですね、と一緒に聴く機会がありました。その内容が、とても興味深いものでした。

まず、2つの生卵を用意し、それぞれ別々のタッパーに卵を割って入れ、ラップをかけます。そして、片方の容器に「ありがとう」、もう片方の容器に「バカ」と書きます。

そこから毎日毎日、朝と晩に、「ありがとう」と書いた方の卵には、「ありがとう、大好きだよ、うれしいよ、いつもきれいだね」といった言葉を、「バカ」と書いた方の卵には、「めんどくさいなー、うざっ、うっとうしいなー、きもい、きたないんじゃ」といった言葉をかけ続けます。

これを約3週間続けた結果はどうなったでしょうか?・・・会場でその写真が大きく映し出されたのですが・・・「ありがとう」と書いて、プラスの言葉、感謝の言葉をかけ続けた生卵は、大きく形を崩すこともなく、少しカビが繁殖している程度です。そして、もう片方の「バカ」と書いて、マイナスの言葉、きたない言葉をかけ続けた卵は・・・何と! 全く原形を保つことなく崩れ、多くの黒カビが繁殖しています。講師の方の説明では、悪臭も漂っていたということです。

皆さん、どうでしょうか。言葉の持つ力について、どう考えますか。

「ハラスメント」、「いじめ」ということが、しばしば取り上げられています。言葉かけ一つ、SNSでの書き込み一つで、人の体調を壊し、「命」まで奪ってしまうことがあるのです。

皆さん、どうか、遣う言葉に気をつけてください。毎日毎日、きたないマイナス言葉を遣い続けると、実は、その言葉を自分自身が浴びていることに気づいてください。小さく柔らかな生卵が約3週間で原形を保てなくなっているのです。人間なら、どれだけの時間がかかるのでしょうか・・・。

まずは、頑張っている自分自身を、しっかり温かい言葉で誉めてください。それから、友達に、「思いやり」の心をもって、温かい言葉をかけてください。そんな“言葉環境”を維持することが、皆の人格向上につながっていることを理解していてください。「うざい、キショい、むかつく、ダボ、死ね」・・・こんな“言葉環境”の毎日を送ってはいけません。目には見えない「言霊」が、皆さんの「目つき」「顔つき」、かもし出す「雰囲気」「第一印象」、そして、「人格」を形成していっていることを忘れないでください。人物を本物にしていくのは、毎日遣う言葉にかかっているのです。

また、ここには、「出入りの法則」が大きく関係してきます・・・「出せば、それに応じたものが入ってくる」という法則です。「ありがとう」と発すれば、「こちらこそ」「どういたしまして」と。「うざいのー」「うっとうしんじゃ」と発すれば、「どっちがじゃ」と返ってくるでしょう。

 「おはようございます」「こんにちは」「こんばんは」「ありがとうございます」「失礼します」「すみません」といった、たった一言、それに加えて、クイックスマイル・・・笑顔ですね。この互いに気持ちのいいキャッチボール、これ、考えている以上に大事なんです。

 自分から挨拶をした数だけ、背骨に「徳」が積まれていき、その「徳」の重みで、のけぞって、いきがり、「利己主義」だった自らを、腰の低い、謙虚で「利他の心」を備えた人格者、本物の人物へと大きく成長させていくのです。

まずは、自分自身が遣う、発する言葉に、これまで以上に意識を持ってみてください。

 

さて、夏休みは、自らの人生について、卒業後の進路について、真剣に考え、本腰入れて取り組める絶好の機会です。

私は、物事に本気で取り組んだならば、「思いは必ず実現する」と、堅く信じています。真剣に向き合い、“寝ても覚めても”それを思い、全エネルギーを使った取組が為されれば、目に見えない、「天佑神助(てんゆうしんじょ)」と言われる、現在の科学水準では証明できない、非科学的と言われる、「天」や「神」の助けも相まって、その目指すものが実現すると思っています。「たまたまラッキーだった」ということを、よく耳にしますが、それは、決して「たまたま」ではなく、その人の、全エネルギーでの取組が為された結果、天から「ここを登ってきなさい」と、梯子(はしご)が降りてきて、思いが実現するという、確かな「因果関係」があるものだと、心から信じています。

かつて、「百年に一度の頭脳」とも評された小説家、幸田露伴(こうだ ろはん:1867年~1947年)、73年前に亡くなられている方ですが、この方の書いた「努力論」の中に、次のような一節があります。

「運命の移り変わる法則は運命のみが知っている。ただ、運命と人力(じんりょく)の関係は我々にも知ることができる。注意深い観察者となって世の中を見渡すと、最良の教訓を得ることができる。成功者を見て、失敗者を見て、幸運な人と不幸な人を見比べよう。いったい、誰がどんな綱をつかんで幸運を引き出しているか、また誰がどんな綱を手にして悪運を引き寄せているか。幸運を引き出した綱を握っている手の平には血が滴(したた)っており、悪運を引き寄せた綱を持つ手の平が、やさしく柔らかい滑(なめ)らかなものであることに気がつくだろう。つまり、幸運を引き出す人は常に自分を責め、手の平から血を流し、痛さに耐えながら運の綱を引き動かして、ついには、大きな幸運の神を招き寄せるのである」と。

 皆さん、日々の小さな努力の積み重ね、やり抜く力が、自らも驚く大きなものを獲得するのです。コツコツと、「自らを信じると書く『自信』」を持って歩みを進めてください。必ず、“目標”は達成でき、人生の“目的”地に到達できるのです。

 先日来、運動部の代替大会の様子を、可能な範囲で見に行かせていただいています。強豪、神戸国際大学附属高校と9回を戦い抜いた野球部、女子部員の割鞘さんの記事も新聞で大きく取り上げられましたので、ホームページに掲載しています。ブロック準決勝まで進んだ女子バレー部、4連勝でブロック決勝まで進み、明日、神戸弘陵と戦うサッカー部、安定感と爆発的な力で、見事、ブロック優勝を果たした男子バレー部などなど、また、このたびは応援に行くことができなかった部、これから大会が始まる部も、日頃の練習風景を見ていますと、皆、素晴らしい!の一言です。

一流の指導者の下、声を掛け合い、真剣に勝負にこだわる姿は、神々しくもあり、見ている人の感動を呼ぶものです。このレベルまで到達できたのも、皆さんが、“寝ても覚めても”その競技のことを考え悩み研究し、勝つことを求めて努力し続け、全力で取り組んだからこそです。

運動部・文化部問わず、部活動での先生とのつながり、チームメートとのつながり、これらは、決して失うことのない、皆さんが自らの手で獲得した生涯の「財産」です。どうか大切にしてください。

 

最後になりましたが、夏休みの間、コロナ対策はもちろん、決して病気や怪我の無いよう、そして、何より大切で尊い、ご両親からいただいた、この世にたった一つの「命」を大切に過ごしてください。

 それでは、8月26日、第二学期始業式で、元気な皆さんとの再会を楽しみにしています。どうか、充実した時間を過ごしてください。

以上、令和2年度第一学期終業式の「式辞」とします。

 令和2年7月31日
    
兵庫県立須磨友が丘高等学校校長 川崎 芳徳