令和2年度「新入生説明会」入学者へのあいさつ

木々の新緑、美しい草花が、うららかな春の日差しに映える今日、この佳き日に、めでたく入学を許可されました新入生の皆さん、入学、誠におめでとうございます。

本日、ここに、保護者の皆様のご臨席をたまわり、兵庫県立須磨友が丘高等学校、新入生、38回生をお迎えしての会を開催できますことは、本校にとりまして、この上ない喜びでございます。厚く御礼申し上げます。

 

さて、新入生の皆さん、皆さんは十数年前に、この世に生を受けられました。産んでいただき、育てていただき、今日、この佳き日を迎えることができました。

  一人では決して生きていくことができない赤ん坊の時から、いや、お腹の中にいた時から、あふれんばかりの愛情を注ぎ、ほかの何よりも優先して皆さんのことを考え育て、そして、きょうの高等学校入学まで導いてくれた保護者の方への「感謝」を決して忘れないでください。この世のすべては、「命」あってのこと、この世のステージに立たせてくださったこと以上に、「有り難い」ことなど、存在しないのです。いただいた「命」・・・大切に大切に、懸命に生きてください。

今日の、この、皆さんの新たな出発、人生の大きな節目で、是非、今一度、この点に思いをめぐらせてみてください。自然と、「ありがとう」の気持ちがわき上がってくるはずです。二度とない、きょうという日に、是非、その気持ちを、保護者の方に伝えてください。

 

 皆さんは、今年3月、それぞれに特色を持ち、活気にあふれ、深い愛情とエネルギーに満ちた先生方がおられる素晴らしい中学校を卒業、義務教育課程を修了されました。いよいよ本日より、高等学校教育がスタートします。2年後の令和4年度、皆さんが高校3年生に進級される時には、成人年齢が、現在の20歳から18歳に引き下げられるという、大きな時代の変化にも直面します。

これまで以上に、自らとしっかり向き合い対話し、自分はいったい何がしたいのか、どんな道を歩んでいくのか、そして、そのためには、何を学び獲得し、どんな高校生活を送らなければならないのかを、深く考えた日々を過ごすことが求められます。

高校生活3年間は、おおよそ千日あります。

「鍛錬千日之行、勝負一瞬之行」ということばがあります。「鍛錬」とは、厳しい訓練や修養を積んで、心身・技能を立派にすること、「勝負」は、勝ち負けの勝負です。「ぎょう」は「行う」という文字を書き、行為・実践という意味となります。「鍛錬千日之行、勝負一瞬之行」・・・「勝負」、「結果」は、「一瞬」で決まることが実に多い。しかし、大切なことは、その「一瞬」に徹底的にこだわり、日々の「鍛錬」を、千日もの長きにわたり、粘り強く継続することである・・・このように私は解釈しています。

皆さんが突破された高校入試本番の日、それまで取り組んでこられた学習時間に比べれば、ほんの「一瞬」だったのではないでしょうか。野球部員がバッターボックスに立ち、ピッチャーから投げられた百数十キロのボールに、手を出すか出さないか・・・何千何万回もの素振りにバッティング練習の末の「一瞬」の判断・・・「結果」は、この「一瞬」の判断で決まってしまうのです。

「無常だな・・・」と、感じるかも知れません。しかしそうではありません。たとえ「結果」はどうであれ、高い「志」をもち、この「一瞬」にこだわり、自らを高めるために「鍛錬」を積むこと、そのこと自体が、最も尊いのです。

なぜなら、皆さん、「人生の目的」とは何でしょうか? 私たちは、いったい何を目的に生きていくのでしょうか?

私は、「人生の目的」は、「幸いにも両親からいただけた『命』に深く感謝し、この『命』が尽きるまで『魂』を磨き自らを高め、獲得した能力・力で、少しでも世のため人のために役立つよう努めていく」・・・これこそが「人生の目的」だと考えています。

千日もの「鍛錬」を継続することで高められた「人格」「人間力」を見たとき、「勝ち・負け」、「成功・失敗」などという結果は、こだわるに値しないもとなるのです。

さらに言えば、厳しい「鍛錬」を継続しながら物事に果敢に挑戦し、失敗・挫折を経験した人こそ、確かなる「人格」の向上が図られていると言って間違いないのです。

 

 これから3年間、学業に学校行事、部活動など、様々な活動が展開されていきます。時には、つらい時があるかも知れません。そんな時こそ、自らを高める絶好のチャンス、「魂」の「研磨剤・磨き砂」だと考え、「結果」を恐れず、挑戦・突破していってください。

そのひたむきな日々の取組・努力こそが、保護者の方、中学校、小学校の先生方をはじめとする、これまでお世話になった方々への、「恩に報いる唯一の道」でもあるのです。

もちろん、「一人で頑張れ」、ということでは決してありません。優しく頼もしい先輩が、また、情熱と愛情に満ちた先生が、そして何より、奇跡的な確率で、今日、同じ須磨友が丘高等学校へ入学した、深い「ご縁」のある「友」がいます。

「友」と語り合い、互いを認め励ましあい、補い合って取り組めば、突破できないことなど、絶対にありません。校訓である「知(ち)」「考(こう)」「行(ぎょう)」の精神を徐々に感じ、実践しながら、何事も真正面から、正々堂々と向き合っていってください。

 

 保護者の皆様、本日は、誠におめでとうございます。立派に成長したお子様の「晴れ姿」をご覧になられ、感慨も一入(ひとしお)のことと存じます。心よりお慶び申し上げます。

 また、このたびの、新型コロナウイルス感染防止対策へのご理解・ご協力に深く感謝申し上げます。

私たちは、本日、かけがえのない、大切なお子様をお預かりいたしました。全職員、最善を尽くし、3年後には、それぞれの、大きな夢に向かって元気に、胸を張り旅立ち、皆様から「須磨友が丘高等学校に入学させてよかった!」と喜んでいただけるよう、高等学校教育を生涯の「生業(なりわい)」とする、プロの教育者としての「誇り」にかけ、誠心誠意取り組んでまいります。

 

 結びに、本日ご出席いただきました保護者の皆様に改めてお礼申し上げますとともに、今後一層のご支援、ご協力をお願い申し上げまして、「あいさつ」といたします。

 令和2年4月8日
    
兵庫県立須磨友が丘高等学校校長 川崎 芳徳