校長室より

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前向きな後悔 ~2学期終業式にて~

生徒諸君、おはようございます。

今日は、敢えて生徒諸君と言わせていただきました。というのも、今から40数年前、私が高校1年生の時です。「生徒諸君」という漫画が流行っていました。少女漫画ですが男子にも人気がありました。今でいうと「鬼滅の刃」とまではいきませんが、映画化もされ、かなりのブームになっていました。その漫画のコミックス全巻がクラスで回っていて、私の番が来ました。あまり乗り気ではなかったのですが、家に帰り読み始めると面白く、徹夜して一気に読んだ記憶があります。主人公とその仲間が高校・大学時代に様々な困難にぶつかり、もがき苦しみながらも、それを乗り越え互いに成長していくストーリーで、その主人公がラストシーンで自分の夢であった教員になり、全校集会の壇上で「生徒諸君!」と第一声を発し終わるという漫画だったと思います。

たまたま出会った漫画ですが、私が教員を目指すきっかけとなりました。その時は、将来の選択肢の一つに加わった程度でしたが、今思えばその漫画に出会っていなかったら、今ここに立っていないと思います。

振り返れば、あの時が分岐点だったなと思えることがいくつか思い浮かびます。良かった選択もあれば、後悔している選択もあります。私自身で言えば、後悔している選択の方が多くあります。いえ、後悔している選択がほとんどです。後悔の連続、後悔の重なりが私の人生と言ってもいいと思います。ただ、自分で決めた選択と、親や他人に決められた選択では、後悔の質が違います。自分で決めた選択で後悔したときは、「次はこうしよう。」「次はこんなことに気を付けよう。」など、次に向かって前向きになります。しかし、自分以外に決められたり、流されたり、強いられた選択で後悔したときは、「やっぱりこうしておけばよかった。」「あの時こうしたかったのに。」「誰々のせいや。」など、ついつい後ろ向きな思考になってしまい、次になかなか進めません。

自分で決めることが肝要です。しかし、独りよがりになってはいけません。論語にこういう言葉があります。「学びて思わざれば即ちくらし、思いて学ばざれば即ちあやうし」。これは、教えを受けただけで、自ら考えなければ、真理には到達できない。しかし、自分だけの考えで、他者に耳を傾けなければ、独りよがりに陥ってしまうという教えです。

君たちは、これから様々な分岐点に立ち、選択を迫られることが多々あると思います。その時は、自分の頭で考え、他者に耳を傾けつつも、自分で決定し、自分で責任をとる。そのために、今、様々なことを学び、経験しているのです。そして、前向きな後悔を重ねていきましょう。

本日は終業式です。また、これから年末・年始の節目を迎えます。この節目では少し立ち止まって自らの一年を振り返り、来年に向け前向きに考えてほしいと願っています。

 

校長 塙 守久