校長室より

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「過去に目を閉ざさず、未来を」~第3学期終業式にて~

 

 皆さん、おはようございます。

 今朝、鶯が鳴いていました。徐々に暖かくなってきて、3月初旬はおぼつかなかった鳴き声も美しい鳴き声になってきました。心が浮き立つような季節の始まりです。

 44回生の卒業式が済んで、1・2年生にとって、1年間の締めくくりである終業式を迎えました。終業式は形だけの区切りではありません。生活の節目のひとつとして、この時期に、1年間を振り返って、次の方向性を自分で決めていくことをしてほしいと思います。

 1年間というのは決して短い時間ではありません。1日1日の変化は目に見えないようなものであっても、1年前と今とでは、大きく違っているものがあるはずです。どのようなことに関して、どのように成長・変化したかということは個人ごとに異なっています。したがって、どのような尺度でこの1年間を振り返って、次の1年間をどのように考えるかということは、ひとり一人で微妙に違うことになるのでしょう。

 けれども、高校生という時代においては、大きなテーマはみんなに共通しています。学習に取り組む姿勢や学力の伸び具合い、部活動などへの取り組み方とその成績など、それから、生き方や考え方の成長に関することです。その大きなテーマを、学校という集団の中で、互いに影響を与え合って、互いを高めようとしているのが高校時代であるのです。

 人生は後ろを振り返ることばかりしていてはならないという意見があります。それは、過ぎたことを懐かしむ気持ちばかりが強いと、発展性に欠けるという意味です。私が今、言っていることは、そのこととは意味が違います。

 初代統一ドイツ大統領のワイツゼッカーという人物が、第2次世界大戦終戦40周年記念演説で、こう述べました。「過去に目を閉ざすものは、現在に対しても盲目になり、未来も同じ過ちを犯すだろう。」と。ドイツ国民に過去の戦争責任を正視し、その責任を引き受けるよう説いた演説でした。それから、ドイツは人道的な観点でヨーロッパの国々に受け入れられるようになりました。

 悲しいことですが、いまだにウクライナでの戦争が続いています。いかなる理由があろうとも戦争は容認できません。各国指導者が過去の大戦、戦争を直視し、同じ過ちを繰り返さないで欲しいと願うばかりです。

 話は大きくなりましたが、君たちにとって、この1年間を振り返って、過去に目を背けることなく、締めくくるという作業は、ひとり一人にとって不可欠のことであると思います。よき春休みになることを祈ります。

 

校長 塙 守久