3学期始業式式辞

皆さん、新年明けましておめでとうございます。2022年、寅年を迎えました。寅は、陽気を内に宿して草花が伸びようとする状態を表し、新型コロナウイルス感染症の問題など、様々な問題が大きな社会問題となっている中で、安定した繁栄・成長の礎を築く年になると言われています。ぜひ、そんな1年であってほしいと願っています。

ところで、新年を詠んだ夏目漱石の句に、「新しき 願もありて 今朝の春」という句があります。この「願をかける」という風習は古今東西、すべての人の営みであったようです。皆さんの中にも、この正月、願をかけた人が少なからずいるのではないでしょうか。少なくとも、ほぼ全員が新年を迎えて気持ちも新たに、「今年こそ」という決意、何らかの目標を持って今ここにいることと思います。

中国の道家の思想書である『列子』の中に、「呑舟(どんしゅう)の魚は枝流に游(およ)がず」という言葉があります。呑舟の魚とは、舟を一呑みしてしまうほどの大きな魚のことです。そんな大きな魚は支流では泳がない、つまり「大人物はつまらない者とは交わったりしない」「高遠な志を抱く者は小事には関わらない」という意味ですが、この言葉には「大きな目標を立てろ」という教えが込められています。「大成する人は初めから大きな目標を立て、大きな舞台で勝負する」というわけです。目標が大きければ大きいほど達成感も大きくなり、そのための努力によって自分が成長できる度合いも大きくなります。万が一失敗したとしても、得るものは異なるはずです。

この言葉を実践したような話があります。戦国武将の毛利元就が12歳の時、家来たちを引き連れて厳島神社に参拝した際、家来たちに何を祈願したか尋ねたところ、ある家来が「殿が中国地域の主になることを祈願しました」と答えると、元就は「中国地域の主とは愚かだ。日本を手に入れるように祈願すべきだ。日本を手に入れようと思ってはじめて、中国地域を手に入れることができるのだ」と語ったそうです。

私の教員としての経験から、このことは、受験や部活動にも当てはまります。目標とする大学のワンランク上の大学を目指して取り組むことが目標とする大学の合格に繋がり、目標とする結果のワンランク上の結果を目指して取り組むことが目標達成に繋がります。目標より一段高いレベルの取組によって目標とするレベルをクリアできるからです。

教員として、私が生徒たちに教えられたことは多々ありますが、そのうちの一つが、「絶対に目標を達成するぞ」という強い覚悟ができた時、目の色が変わり、生活が変わり、人が変わり、結果も変わるということです。明高生の中から、そんな人が一人でも多く出てくれることを期待しています。

ちなみに、エジソンがこんなことを言っています。「結局、日常をダラダラ過ごし、ズルズルと落ちていく人間の何と多いことか。直前になって準備不足に気づいて初めてそこで後悔する人間ばかり。残念ながら、それは負けたことにはならない。負けたという事実は勝負をした人間にのみ与えられるのだ。勝つための努力を放棄した者は勝負すらしていないのだから」

さて、3学期を迎えました。1・2年生は1年間の総仕上げとして3学期をしっかりと締めくくってくれること、3年生は全員が進路実現を果たし人生の新たな門出を晴れやかな気持ちで迎えてくれることを期待しています。

最後に、新型コロナウイルス感染の第6波が危惧されています。感染者が日増しに増加しています。今一度緊張感を持ち、3密の回避、マスクの着用、手洗い、うがい、消毒を徹底してください。過去に本校で感染者が出たケースはそのほとんどが家庭内で感染したものです。家庭内でも感染防止に努めてください。マスクをしていない人との会話・食事は絶対に避けてください。お願いします。