第76回 入学式 式辞

夕光(ゆふかげ)の なかにまぶしく 花みちて しだれ桜 輝きを垂る
夕陽の優しい光を受けて輝いて見えるしだれ桜の可憐な姿を、歌人、佐藤佐太郎はこのように詠っています。本校校庭、自彊が丘の桜も、この短歌のように、今を盛りに咲き誇り、その可憐な姿はまさに皆さんの姿を象徴しているかのようです。
ただいま入学を許可いたしました三二0名の新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。教職員一同心からお祝い申し上げます。今日のその晴れやかな姿、緊張した表情にも喜びが満ちあふれているようです。
皆さんは、コロナ禍という多くの不安と制約を余儀なくされる中にあって、これらにも打ち勝って、見事合格の栄冠を勝ち取りました。
本校では「文武両道」を校是とし、「社会的で創造力豊かな自主的個人」を育成するため、グローバル化時代に求められる思考力や判断力の伸長、主体性や協働性の向上を図る一方で、昨年度より「ひょうごスーパーハイスクール」の研究指定を受け、地域はもとより、大学や企業等との連携を密にし、探究活動等の教育活動の充実に努めております。
このすばらしい環境下で、若者らしく、何事にも果敢に挑戦し、将来の夢や進路希望を実現するべく、高校生活の第一歩を踏み出してください。
さて、本校は、大正十二年に明石市立明石中学校として開校し、昭和三年に兵庫県立明石中学校、昭和二十三年の学制改革により兵庫県立明石高等学校となり、二年後には創立百周を迎える東播磨地域を代表する伝統校であります。その間、県下唯一の美術科の設置、西オーストラリア州モーリー高校との国際交流、理数探究類型の設置等、学校改革を進めながら、地域社会や国際社会で活躍する有為な人材を多数輩出してきました。
校庭に凜として伸びるクスノキに見守られ、閑静な荷山に位置する本校からは瀬戸内の海と淡路島、そしてそこに架かる雄大な世界最長の吊り橋、明石海峡大橋を臨むことができます。皆さんはこの恵まれた教育環境のもとで、建学の精神である「自彊不息」を基軸にして人生でも最も意義深い、青春の三カ年を送ることになります。この大切で貴重な時期を本校で学ぶ皆さんに、三つのことを希望します。
一つ目は「高い志を持ち続けてほしい」ということです。自分の志を立て、それに向けて具体的な目標を持つことは、自己を律し、生活を充実させる基盤となります。皆さんは高校生活三カ年の延長線上に、将来どのような人生を生きるかということを具体的に考えているでしょうか。どのような職業に就き、社会にいかに貢献していくかを考えておくことによって進路も明確なものが見えてきます。
本校での充実した学びを通して自己認識を深め、自己実現をめざして、高い志を持ち続けながら努力を重ねてください。
二つ目は「確かな自分を作り上げてほしい」ということです。世界はグローバル化時代を迎えています。あらゆる知識や技術は日進月歩以上であり、おびただしい情報が世界中に氾濫しています。皆さんが心豊かに生活するためには情報に流されたり惑わされたりせず、主体的に判断し行動することが大切です。国際的な広い視野に立って、弾力的で柔軟なものの見方、考え方を持つ、そして善悪・真偽を正しく判断できる確かな自分を作り上げ、磨き上げてください。
三つ目は「良き友を持ってほしい」ということです。良き友とは、ともに喜び、ともに悲しみ、ともに高め合うことのできる真の友人です。この良き友は、安易に調子を合わせたり、誘われるままに行動したりするような関係の中には育ちません。時には「ノー」と言う友こそ心から信頼できるのです。他を尊重し合い、素直な気持ちをぶつけ合い、目標に向かって切磋琢磨し合う中に友情は育ち、本校校訓の一つ「協同」が生まれます。他を思いやる心を忘れず、自分にないものを学び、お互いを向上させ、信頼関係を深めながら、生涯にわたって心の支えとなる友を得てください。
最後になりましたが、保護者の皆様に一言ご挨拶申し上げます。本日はお子様のご入学本当におめでとうございます。心からお祝い申し上げます。高校の三年間は、人生の方向を決定する大事な時期であり、その一方で悩みや苦しみが大きい時期でもあります。私達教職員は、ご子様が、自らの生きる道を、自らの力で切り拓いていけるよう、全力で指導に当たって参りますが、お子様の健全な成長を願い、豊かな個性を育てていくためには、学校と家庭がそれぞれの役割を果たしながらも、相互に補完し合い、連携を密にしていくことが重要であると存じます。どうか、本校に対するご理解ご協力、そしてご信頼をよろしくお願い申し上げます。
新入生の皆さん、本校の校訓「自治」「協同」「創造」のもと、知・徳・体の調和のとれた人格の陶冶を図り、心豊かに、高い志を抱き、未来を主体的に切り拓いて行く人間として成長していくことを心から期待し、式辞とします。